00168_第三話『山川町のひとたち』
筆者が散歩をしていると、泣いている男の子を見かけた。
声をかけたほうが良いのだろうか、と思案する。
気付かないふりをして通り過ぎるのは簡単だ。
気づいてほしいのだろうか。
放っておいてほしいのだろうか。
お父さんやお母さんはどうしているのだろう。
でも、もし親御さんなくしたりしてたら余計に傷つけちゃうかな。
不自然に歩みを止めることはできないので、男の子と筆者の距離が少しずつ詰まっていく。
あーもう、どうしようかなぁ。
声かけちゃおうか、やめとくか。
やめとこ。
そう思って男の子の隣を通り過ぎた。
「やっぱりこの大人も助けてくれなかった」
そんな声が聞こえた気がした。幻聴かもしれないね。薬を飲んで寝ようね。
00167_サトウ
ノルマ、カルマ、カルタ、カルト、カート、チート、チーズ、ポーズ、ポーク、ピーク、ピンク、ピンチ、パンチ、パンダ、ホンダ、ホンネ、アンネ、アカネ、オカネ、オカン、オトン、バトン、バトル、ケトル、サトル
に引き続き、本日はサトウです。25記事目です。
だいぶ久しぶりにこのシリーズです。
動詞シリーズかもといいつつすぐに名詞に変えていくのが私らしい。
あの、以前Twitterでのみものを擬人化するアイドルユニット「あくあす!」をプロデュースしたい、なんていうことを書いておりました。
そしたらsushimaさんがイラスト描いてくださったんです! ありがとうございます!
興味のある方はTwitter見てくださいね。
白湯のサユさん
冷水のレイさん
コーヒーの恋(こい)さん
とか
安直な妄想も良いところでございます。
せっかくなので恋さんの名前は
佐藤 恋
さんにしようかと思います。ようやくタイトルの「サトウ」につながってきました。
佐藤の名字としての完成度、素晴らしいですよね?
知名度抜群、それでいて必ずしも凡庸でない。「S」から始まる名字なのでスタイリッシュに感じる……などなど。
妄想であることを自覚しつつ、積極的に同意を求めていくスタイル。
のみもの擬人化プロジェクトはがんばって大きくしていきたいですね。
乞うご期待です。
00166_あきらめきれない
昨日には「あきらめる」記事を書き、今日には「あきらめきれない」記事を書く。
それが私というものです。
どうしてこう、あきらめるとあきらめきれなくなるような事が起こるのでしょうね。
もうやめだ、と寝ることにすると。
しっかり寝るので体調が良くなります。
文章を書く余裕が生まれます。
書いた文章が読んでもらえることがあります。
ブログアクセスが増えたりします。
気分が良くなってきます。
ここで
「やっぱり文章を書こう、またチャレンジしてみよう」
になってしまい、睡眠を削ってしまったりする。
どんなに「あきらめました」と宣言したところで、そうそう簡単にあきらめなどつかないのです。
もう何年も「もっと認められたい。すごい文章を書きたい」と思って生きてきたのです。
そうそう簡単にあきらめられませんよね。
というか、正直あきらめたくない。あきらめた方が得策だと知りながら捨て切れない。
それが私というもの、なのかなぁ。
「文章はがんばって書く、ただし睡眠は絶対大切にする」
とりあえず次点で目指すのはこれかなぁ。
でもこの要領でどんどん条件増えて潰れる、っていうパターン、もう嫌になるほど繰り返したなぁ。
やっぱり、少しずつ、かなしいけれど夢を手放さないといけないかな。
00165_あきらめる
あきらめる、というとネガティブに聞こえますが、どちらかというとポジティブな記事です。
「ねぇみんな聴いて! ぼくね、あきらめることができたんだよ!!」
って感じの。
やりたいことも勉強したいことも途方も無いくらいたくさんあります。
それをあきらめたのです。
とりあえず全て捨てて、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きることだけを考えようと決めました。
とても気が楽になりました。
仕事も趣味も将来の夢も、とりあえず今はどうでもいい。
眠ることを大切に。
そうするとふしぎなもので、朝目が覚めたらブログ記事を書いたりする余裕も出てくるものです。
成し遂げるためにはあきらめることが大切なのかもしれません。
00164_認められるために
陽性症状を呈していることは、幸せだと思っていました。
全能感がある。
音楽に感動する。
小説が面白い。
見るもの全てが美しい。
内面の充実は、陰性症状時代と比較にならないのはもちろん、
メンヘラになる前と比べても大きな感覚を伴っていました。
他の人に理解されなくても
「自分はもっと先を見ている。あなたが理解していないだけだ」
と軽くあしらっていました。それに深く頷いてくれる人も、実際いたのです。
「あなたが言うのはつまりこういうことでしょ。私はそれを理解した上で、なおこの考えでいるのです」
「どうしてこんなに言葉を尽くしているのに分かっていただけないんですか?」
「この良さが分からないのはあなたが劣っているからで、かわいそうだとすら思います」
「滑稽に見えるでしょう? でもこれがとても大切なんですよ。いずれ、あなたにも分かる形になります」
などというような思いがありました。
自分が最高で、自分が最強だと、そういう思いだったのです。
実際に尊大な態度、言葉遣いをすることも多くありました。
ところが最近、様子がおかしいことに気づき始めました。
上手くいっていたはずのことが、思い通りにいかなくなる。
雰囲気では絶対に自分が優勢のはずなのに、納得してもらえないことがずっと続く。
他の人の言っていることが理解できない。やたら時間がかかる。
小さなことに感動できる、などと言いながら、
どんなに小さなことでも過大に評価して感動してしまい、
本来感動すべき、本質。誰もが感じる本質を素直に感じ、噛みしめることができなくなっていました。
頭を使うゲームで自分が最善だと思って取った戦略が、次々と相手にかわされて負けを重ねました。
もしかして、妄想に踊らされているんじゃないか?
そうした思いが強くなってきました。
自分は、その瞬間気持ちよくなることばかりを考えて、人を見下し、妄想を確信し、調和を無駄にかき乱していたのではないか?
偉そうなことばかり言うだけ言って、結局結果が伴っていないではないか。
調子を合わせてくれる人たちだって、おまえが言っていることが妄言だと分かっていて、その上で演技してくれているのではないか?
逆におまえがする雰囲気だけを見て、お前の言葉の意味など何一つ伝わってなくて、雰囲気で返事をしているのではないか?
ネガティブにスイッチが入ると、ポジティブ方向に加速させたスピードがそのままで逆回転していきます。
自分のことがすべて妄言だとしたら、まだ分かりやすいのです。
自分が今考えていることが、正しい可能性があって、本当に価値ある考え方である可能性もあると思うから、一概に否定出来ないのです。
でも、それでは認められないと思うのです。
認められるために、覚悟を決めなければと思います。
生きるためには認めて頂くことが必要で、そのためには今のままではできないから、です。
00163_サトル
ノルマ、カルマ、カルタ、カルト、カート、チート、チーズ、ポーズ、ポーク、ピーク、ピンク、ピンチ、パンチ、パンダ、ホンダ、ホンネ、アンネ、アカネ、オカネ、オカン、オトン、バトン、バトル、ケトル
に引き続き、本日はサトルです。24記事目です。
動詞シリーズが続きそうな予感ですね。悟る。
「悟り」って、仏教の言葉ですかね。
あんまり詳しく知らないのですが、「最近悟りを開いてきた」と、冗談で使うことがあるかなぁと思います。
私もたまにやります。
こういう風に使う悟りは結局冗談で。
本当に落ち着いた心地とか諦めが付いたりとか、そういうことってあまりないです。
何があっても安定していそうな「悟り」には、そう簡単には辿り着けそうにありません。
まぁ、そう簡単にたどり着けたら苦労はしないさ。みんな菩薩になっちゃうよ。
人間、なかなか悟れないからこそ生きているのかもしれんしなぁ。
やれることをやれるようにやっていきましょう。
00162_第二話『山川町のひとたち』
山川町にも夏が来ている。
田舎らしい夏だ。蝉の鳴き声が聞こえる。
この時期になると、毎年山川町でも祭りが行われる。
屋台が出て、お神輿が出て、花火が上がる。
町のみなさんがとても大好きなお祭りだ。
筆者がお祭りの会場を冷やかしに行ったら、浴衣姿の女の子に声をかけられた。
「あ、ヤマカワさんこんばんは!」
普段はストレートで下ろしている長い髪が、今日は綺麗に結わえてある。
気合を入れて、美容院にでも行ってきたのだろうか。
「おー、久しぶり。大きくなったね」
筆者も返事をする。昔よく親戚のおじさんとかから言われていたことを、自分が言うようになったのだなぁと思う。
「もう身長はほとんど伸びてないよー。高校入ってからずっとこのままだけど、会う度に『大きくなったね』って言うよね?」
この娘もなかなか鋭い。適当な受け答えをしていると即座に見抜かれてしまうなぁ。
自分としては適当なわけではなく、自然に口から出たことを言ったのだが。
「あ、もしかして身長じゃなくて別の所の話?」
目を平らにして彼女がこちらを見る。
「まぁ胸なら人並みには大きくなりましたよ、うん」
「いや、そういうことを言いたいわけではなくてだねぇ」
こちらの話も聞かず、彼女は「人並み」の胸を張った。
筆者には「人並みの胸」ってもう少し大きいのかと思われたのだが、彼女が人並みと言えば人並みなのだろうと思い、突っ込まないことにした。
「今日は友達と来たの?」
話を変えてみる。
「んー……まぁ、友達と」
彼女は少し目を泳がせた。ので、少し察してあげることにした。
「それはもしかして『今夜、恋人になるかもしれない男の子』かな?」
我ながら意地が悪い。
彼女は笑う。
「なにそれ。オッサンドラマの見過ぎじゃない? 漫画の読み過ぎじゃない?」
自分より一回り近く年下の少女に笑われてしまった。ムキになりそうな自分を抑える。
「普通に、友達とだよ」
普通に友達とだったら、そんな風に言葉をタメたりとか、言うのに時間がかかったりしないだろうけどね。そんなことを聞くとまたオッサンディスられてしまいそうなので、やめておくことにした。
「……自分が友達だと思っていても、相手が友達だと思ってくれていない、なんてこと、よくあるのかな?」
うつむきながら言う。こちらを向かない。本音の話をする時、彼女は顔を見せてくれない。
「君が誰かのことを友達だと思わない事があるように、誰かも君のことを友達だと思わないかもしれないね」
「かもしれない」とぼやけさせたけれど、彼女の慰めにはならなかったかなぁ、と反省した。
「友達がほしいよ」
「うん、分かるわ」
「自分が大切だと思えて、相手からも大切だと思ってもらえる。そういう友達がほしい」
夏祭りの喧騒の中で、ひどく寂しげに彼女が言う。
「まずは、君ができるだけ沢山の人を大切にしよう。そうしたら、何人かからは大切だと思い返してもらえるかもしれない。ギブアンドテイクの最初の一歩は、君から踏み出せばいいと思うよ」
一回り以上人生を重ねてきて、できるアドバイスがこれだけか、すこしさみしいなぁ。
「あー、かなここんなところにいた~」
人ごみから女の子たちが彼女に向けて手を振る。彼女たちはかなこちゃんの「友達」なのだろうか、とふと思う。
「ごめんー。ちょっと親戚のおじさんと話しててさー」
さっきの寂しそうな様子を微塵も感じさせない、若くて、元気で、抑揚のある大きな声。
「んじゃヤマカワさん、また今度ね~!」
手を振って彼女は人ごみに溶けていく。
なんとなく、瞳が輝いているように見えた。
泣いているのか、活き活きとしているのか。
多分両方だろうな、と思いながら、筆者はお祭り会場を後にした。
~完~