ヤマカワラボラトリ

ことばとおんがくがすきなめんへらさん、ヤマカワの研究所。

00273_ほっしー著『うつを治す努力をしてきたので、効果と難易度でマッピングしてみた』

 今日は、Twitterでもフォローさせていただいているほっしーさんの初の著書、『うつを治す努力をしてきたので、効果と難易度でマッピングしてみた』の感想を書かせていただきたいと思います。

 イベントで少し直接お話しさせていただくことができ、とても感激したので「ブログでレビューします!」なんて言ってしまったのですが、ちょっと冷静になると「わしにレビューなんてできるんかなぁ……」と不安になってきてしまいました。精いっぱい書きますので、どうぞお付き合いくださいませ。

 

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 『うつを治す努力をしてきたので、効果と難易度でマッピングしてみた』(以下、本書)ですが、ご自身もうつ病を患っている(現在は寛解に近いとのこと)ほっしーさんが、症状を改善するために取り組まれたことの経験談が書かれています。その数、延べ33件。多いですね。これだけ色々なことに取り組まれたというのが、まずすごいです。

 

 で、この33件の項目を「お手軽⇔難しい」「効果高い⇔効果低い」という二軸の表に置いていったのが、本書で言うところの「うつマッピング」ですね。本を開いて2ページでこちらの図が載っています。興味のある方はこの図だけまず書店で眺めるのが良いでしょう。そこから気になった項目のところを立ち読みしていく、なんて形で触れていくのもいいと思います。

 

 もちろん人によって「これ、そんなに効果なくない?」とか「これはもっと手軽にできるよ」とかそういう意見も出てくると思います。そういう考えのある方は、ぜひ本書の最初に載っている表を使って、ご自身の「うつマッピング」を作っていただければよいのかなと思います。うつ病に限ったことではありませんが、精神疾患というのは人によって症状の出方も対策の仕方も千差万別なものです。なので、この人に効いたことが私にはうまく効かない、なんてこともザラにあります。「自分の治療法」をしっかり見出していくためには、人の意見・体験を参考にしつつ、自分に合うものをオリジナルで作っていくのが大切になるでしょう。

 

 それでは、もうちょっと具体的なお話しをしていきましょう。私が読んで印象的だったのが以下の項目です。

 

 「ハーブティー

 「認知の改善」

 「思考をシンプルにする」

 「メンヘラコミュニティ」

 

 一つ一つ簡単にお話を。

 ハーブティー、これは単純に私が今までほとんど飲んでこなかったので、ちょっと飲んでみたいなと思うようになった、ということです。メンタルケア専用のハーブティーもあるとのことで、興味がわきました。なんとなくオシャレな感じがして、癒されそうなイメージです。

 

 続きまして「認知の改善」。そうなんです、私も認知結構歪んでるんですよ。

 「完璧にやらなきゃ」「自分は駄目な人間だ……」みたいな非現実的な思い込みが強い。頭では分かっていても自動的にこういう思考がわいてきてしまう時が、しばしばあります。そんなときに思い出したい項目がこの「認知の改善」でした。認知行動療法、私も言葉くらいは知っているんですが、ちょっと勉強してみたいと思いました。本書内で紹介されている『いやな気分よ、さようなら』を読んでみたいところでございます。

 

 「思考をシンプルにする」も、認知の改善と同様ですね。これはアドラー心理学の本でも言われていましたが、自分で考えを複雑にしてしまうせいで、悩みが深まる。思考をシンプルにすることで、悩みも効果的に減らせそうです。特に本書内で紹介されていた「エッセンシャル思考」というのは良さそうでした。思い返せば私も、何でもかんでも「やらなくては」「どれも大事」「全部できる」と考えがちでした。いろいろなものを手放していくことで思考をシンプルにできるかも、と思いました。

 

 さて最後、「メンヘラコミュニティ」。

 本書では「難しい」「効果低い」の中でもダントツに厳しい評価を受けている項目です。

 これは実際、そうだと思うんです。関わる相手がどんな相手かわからない。自分が相手に大きな影響を与えてしまう可能性もある。相手から辛い言葉を受けたり、仮に短期的に仲良くやれたとしても、その後関係が破綻して余計に深いダメージを負ったり……そんなことがたくさんあるのです。

 私自身、メンヘラで集まって助け合えたら、と思うことはあります。実際、コミュニケーションを取ろうとしてきたこともありました。一方で、そうしたコミュニケーションが難しく、破綻に終わってしまったこともあります。夢を描きがちになるけれど、現実はとても厳しいものです。

 ただ一方で、ほっしーさんご自身も「いつかはコミュニティを作りたい気持ちもある」とおっしゃっている通り、やっぱり夢は描くんですよね。私もできれば、何かしらのコミュニティの形成に関わりたい気持ちがあります。この夢を何かの形で現わせたら、と思います。

 

 そんな項目がとても印象的だった本書。

 最後に書かれていたこともまた、とても心に残りました。少し引用させていただきます。

 

 「こんな効果の薄そうなこと、チンタラやってても意味ないよ」と思うかもしれません。

 しかし、チンタラやるしかないのです。「これをやったら一発でうつ病が治る!」というものなどないのですから。

 (本書307ページより)

 

 そうなんです、と大きく首を振りたくなる箇所でした。

 精神疾患の治療は、とても地味なものを長期的に根気よく続けていくことが求められます。しかもその中でも「良くなった」「悪くなった」の波があり、そのたびごとに「もういける!」「やっぱり私はだめだ……」と、大きく考えが揺れ動きます。思考の波のせいで船酔いみたいになる、そんなことを私もよく思います。

 だからこそ、些細なことでも継続することが大事なんです。継続は力なり。偶然にもほっしーさんからお話しいただいた「しょぼい文章でも書き続けることが大事」というお話とつながってきました。地味でも今やっている治療やストレスコーピングを信じること、そんなことから好転の一歩が踏み出せるのかもしれません。

 

 そんなところで、とてもたくさんのことを本書から学ばせていただきました。本書もほっしーさんのブログと同様、とても人間味のある読みやすい文章で語られています。うつ病の方も他の精神疾患のある方も、健常者の方も含め、みなさまにおすすめしたい一冊です。