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ヤマカワラボラトリ

ことばとおんがくがすきなめんへらさん、ヤマカワの研究所。

00014_不器用な愛情

もうだいぶ前から「君の名は。」が話題になっている。
僕も劇場で見てきたし、とても面白かったのをよく覚えている。
レイトショーだったにも関わらず、場内はほぼ満席だった。
アニメを見ることがこんなに大衆化するなんて、10年前には思ってもいなかった。
 
10年前の僕たちは、ヲタクと言われ蔑まれてきた。
クラスの中に居場所がないから部室に仲間と集まってアニメやゲームの話をしていた。
そんな僕たちが「何この映像! すげぇ!」と感激していたのが、新海誠氏の作品だった。
 
時は流れて。
俺たちのスターはみんなのスターになった。
スターの作品は今も素晴らしい。
だがなんだろう。
時代が変わったのもある。
同じ人じゃないこともわかる。
でも、でもね。
かつて「アニメなんてキモい」と言っていた連中とよく似た若者たちが、
君の名は。面白かった~」と言っているのに、違和感を覚えるのだ。
かつて友と同じコンテンツの良さを分かり合うことは楽しかった。
でも、彼らと「君の名は。」の面白さを語り合うことはできるのだろうか。それは楽しいのだろうか。
 
マイナーなバンドを追いかける女の子が、
バンドが売れ始めた時に抱くと言われる、複雑な感情と似ているのかもしれない。
バンドが人気を博すことはファンにとっても嬉しいはずなのに。
それをファンである女の子自身も願っていたはずなのに。
「あの頃のが良かった」なんて言ってしまう。
新たについたファンを「新参」なんて呼んだりしてね。
 
一途な気持ちでボーカルの追っかけをしていた女の子。
ずっと応援していて、ようやく顔と名前を覚えてもらえて。
少しずつボーカルに近づけてきたとき。
新たにファンになった別の女がさらりとボーカルの隣を奪っていく。
あいつより、絶対あたしの方があなたのことを愛していたのに。
あんなに軽い感情じゃなくて、あたしの気持ちのほうが真実なのに。
そんな本人しか納得しないような不器用な愛情を、自分も抱えているなぁと思う。